テステステスただ今マイクのテスト中テステス、えーあっ、光がひと筋ふた筋み筋、よん筋ご筋通っていくよ。詰め込みすぎだろこのバスは、てなっ。トラックが同じスピードで併走しているがために停まっているように感じられないこともないけれども光が通り過ぎていくこととゴウゴウと唸っているエンジンが走っていることを、しかし光といっても締め切っているからして外の状況が丸わかりというわけではないんだな。くさいくさい内のこと諸々あわせてみれば我々は労働者でありいまからまさに労働地へと向う車中にいるに違いない、同じ寮からの労働者見知った顔は二三人に過ぎず大半は知らん顔であるが労働者の顔である、知らん顔が知らん顔をしているゆえになにか殺伐としている。この俺の前に乗っている女はどう思っているのかなにしろ車中唯一の女だ大体なにをするにせよ男女比を気にするのが昨今の傾向であるのだからおかしいではないかおかしいではないか、おかげで労働者連中がいきり立ってしまって獣臭とフンガーフンガーという呼吸音、熱い視線によって車中の空気が犯されて学生時代の輪姦学校を思い出さずにはいられない、なーんてなっ。おっと彼女の口癖がいま俺の口からこぼれ落ちてしまったな彼女といっても一年前に逃げられたから元彼女ということになるのかな、てなっ、なにゆえ男性労働者が女性労働者を前にして陵辱絵図を繰広げないかというと監督者が先頭の座席のうえに立上がって睨みをきかしているからに違いない俺も先刻から監督者だけには視線を合わせないようにしている背は七尺おそろしく胸板が厚く丸太のような腕をしていかに屈強な労働者連中でも十人束にでもならない限りかないっこないのではないか。なかば拉致のごとく真夜中に叩き起されて強制的に労働させられるとは嫌なことだ、誰も「これからお前らを労働させる」とは言っていないが車中は労働者さらに限定していえば工場労働者だけで満たされているのでこれはもう工場に連れて行かれて労働させられるとしか考えられない。上部が俺たちの生活に強制力を発揮するのは労働においてしか考えられないのであるから可能性は十割に限りなく歩み寄っていくそれにしてもむかつく、行く場所くらい教えてくれても良さそうなものだ。あー何時着くとも知れない旅路、眠れないに決まっているバスに放り投げられる寸前に闇雲に掴んだ物が耳栓であったことは不幸中の幸いである。まったくもって音ほど安息を妨げるものはない俺はこれから幻想の世界へと落込んでやる、なーんてなっ、バスの行き着く場所はわからないまあ工場である確率が極めて高いということは端に退けるとして異世界へのトリップ、ファンタジーといえないこともない。世間ではハリポタハウルゴナルニアゲドセンロドリンなる幻想世界が流行しているようだが常人の考えの及ぶところではないところまで及んでしまっているのは幸か不幸か文学の発展は神話に行き着くというがまさに神話級の壮大な構築物、ジョンズルグイントルキン唯一人で創りあげるとは天才のなせる業。凡才は天才に泣くギュウギュウ詰めでバスに揺られ飯の為に体を動かす俺は凡才の極みで涙が出てくるのであるファック、ここでひとこと言っておくと車中は全員例外なく立っていてというより座席は取外されていて我ら労働者を人と思っていないことは明白であり例外なくとは言ったものの監督者の立っている座席だけは残されたままであるわけで俺の真ん前に唯一の女がいて女の尻が俺の股間にキュンキュンアタックしている。もう幻想どころではなく現実的想念に囚われの身となった私は不可避な状況を押戴いて今、車内を俗心の解放区とすべく聖なるものたちを俗なるものたちへカルティヴェイトするしかないのである。すわっぷ。俺の喉から漏れた音ならぬ音が骨を伝わってくるが周囲の人々にまで届いたかは定かではない、聞こえたか? どうなのか? 耳栓を外して外界の音という音に耳を澄ませど何も聞こえずこのように心の声が他者に語りかけることを意識しながら生まれてくるというのはなんとも不思議なことであるなあうわっびっくりしたなあもう誰だよこいつはそんなにバスが揺れてないのにこっちにもたれかかってきやがった、んよく見てみれば豊松のケンちゃんじゃあないですか懐かしや懐かしやケンちゃん紐育へ行って米売買で天下とったるゆうてたのにどないしたんやと話しかけたいところだったが監督者の眼光が鋭さをますます増してどうしようもない。ほんならごめんやけどケンちゃんのことは見いひんかったことにするよって堪忍、むバスのスピードが落ちてきてるんやないかとすれば眼前に迫った肉体の酷使、あーチョーいやだゲバゲバ。だいたい体のご奉仕なんざあオレっちにはあ向いてないんでござんすよお、もともとインテリ家庭に育ったんだから無理ってもんだよ俺を動かしたら大したもんだって俺が言ってんだもっと頭使う仕事寄越してくれよ出版制作広告企画エスイーティーケーエムアールってな、でもよく考えたら俺の親も工場労働者だったかしらさらによく考えたら工場労働者ってメチャ頭使うんとちゃうけぐっばっと何しよんじゃワレそない急制動で停めよったら怪我してまうがな舌噛んで血が出るったら出る出る、ほら見てみいや豊松のケンちゃんもおケツ丸出しですっころんでけつかる前のおなごもバランスを失うてあっらー俺の手が胸にめり込んでしまったこれは役得とかいうものであろうか不可抗力とかいうものであろうかあっらー。監督者がこちらに視線をホールド神殿の柱のような極太の御足を御尻の御筋肉で御前に御動かしに御なられて御っとこりゃあいけねえやいちょっと御待ちにならねえかいそうか御待ちにならねえか、儂の目ん玉の真ん前まで御臭い御口を御近づけに御なられてなにをやってるんだ御前は御馬鹿なのかそうなのかモウ着いたんだよとっととバスから御りて死ぬまでトットコ働きやがれと御っしゃる、そうです私は働くのです貴方の手となり足となり身を粉にして働きます見れば横のケンちゃんも御ケツをケンケン基ペンペンされて半泣きべそ前のおなごに至ってはモウ既に作業着を脱がされてマグワイヤあんたそんなことしたらフェミニズム団体から抗議がくるよでもまあいいか抗議してもどうかなりそうな世界でもないしまいっかでいっかファック。降りた俺は降りたバスを降りた俺は降りちまったそこに広がる人外地、ガンを片手に外人が我ら倭人を監視中冗談きかないみたい。早速一人のガンマンが近づいてきて銃口をカッチリと俺の後頭部に蜜月関係なんてしたくねえよファックあかんファックとか言ったら即刻あの世逝きますなーんて情報頭の左の奥のほうその辺にこびりついてるもんだからしてお口にファック基チャック。ファックは私たちの言葉風味に味付けしなおせばクソッタレになるのだろうかクソッタレ確かにむかつくなあ自分にとってむかつくことは他人にとってもむかつくとされているから俺言わない俺ファック言わないチョーいい奴俺、だのにおかしいではないかチョーいい奴に銃突きつけるお前チョー悪い奴ってな、あっらー今外人の目盗み見たら本気の目してた俺逆らわない逆らってもどうかなりそうな世界じゃないからでもお前はグリグリと後頭部を銃口で押してくる何故? 俺の横に銃を突きつけられたケンちゃんが並ぶ俺たちは視線を交わし運命共同体となるのだろうかジリジリと照りつける太陽の下にいたいと願いながらも近づいてくるのは闇黒ファクトリー一寸先も見えぬ先を見据える、あーおっとろしいファックファックファック今反撃の狼煙を上げずしていつ上げようか見よ労働者! これが魂のこぶ パンッ 振り向けば青い空青い空の下で皮膚の下に赤い血を流す俺たちは既に反抗的であるのでした、なーんてなっ。
グラグラと聞こえる機械音けれども混濁した意識下であるからしてファクトリーの機械がグラグラといっているのか機械のような我輩の脳がグラグラ揺れているのか判然としない、願わくば我輩の脳のヴァイブであって欲しいものよと思いつつグラグラチュボーンと頭蓋を突き破って飛び出る脳グラグラデュバーンとファクトリーの鉄扉をこじ開けて溢れ出す機械、人工混淆して未見未至未知の世界へ超然とバタフライする我乃至他を夢想して俺は涙を流すもう手前の爆音脳トルダムの鐘と正対せずに済むのかと思うと嬉しいやら悲しいやらとそこへ通りかかったパチ屋の街宣車ジャンジャンバリバリなる文句を喚き散らかしたがまさかそれが俺が聞いた最後の言葉になろうとは……。
<了>