ファンタジー南台

満天スモッグ

 

 

 

 

「二人になっちゃったねぇ」

「まあよかったけどな。あいつ、今日ファンタジーランドに行ってるらしいで」

「えっ、もしやイルミネーション見に?」

「そうちゃうん」

「えーっ、最悪、あんなん見に行ったって混んでるだけやん。人ばっかりやで」

「まあな、でもミチらしいやん」

「そうやけど。私は行きたくないわ」

「人ごみ嫌いやもんな」

「なんかさ、人ばっかり見とったら気持ち悪くなってくるねん。頭ばっかりやん、みんな動いてるし」

「そら動くやろ」

「うん、でもそう思わん?」

「うーん、どうやろ。俺はなんも考えてへんわ」

「ふーん」

「この前さ、いい感じの子おるって言ってたやん。ほら、年下のさ」

「うん」

「高校生やっけ」

「うん」

「……あかんかったん?」

「……うん」

「付き合ってる人おるんやってさ、同じクラスに」

「同じクラスって響き、懐かしいわ」

 

「高校生って、犯罪やん。だからよかったんとちゃう」

「いや、犯罪ちゃうけど。まあ、うん。同じクラスのやつの方がいいやろなぁ」

「そうそう、こんなおっさんイヤやろ」

 

「あ、ごめん」

 

「これおいしいわ、カフェモカ」

「そうか」

 

「ちょっと早いけどもう行かへん? そのへん散歩しようよ」

「うん、ええけど散歩てどこ行くん」

「散歩やからそのへんや。でもな、すごいとこあんねん」

 

 

「外はやっぱり寒いなぁ」

「マフラーとかしろよ、いつも薄着やん」

「荷物増えるやろ、それにもさもさするし」

「そうか? もさもさがあったかくてええんちゃうの」

「いややわ。あ、ほらほらあれ」

「なんや、あれ」

「そうやろー、やりすぎやと思うねん」

「ここは一体どこやねん」

「あれトナカイやろ、ほんであれがうさぎ、あ、あっちにサンタおる」

「ようわからん動物もおるなぁ」

「うん、なんやろな、あれ。でな、きわめつけがあそこにあるアロハ、ってかいてあるやつや」

「アロハってなんやねん、関係ないやないか」

「ハワイ好きなんちゃう」

「わははは」

「あはははは」

 

「なんかなぁ、こんなんやってる家昔はなかったよねぇ」

「そうやなあ」

「しかもさ、最近さらにひどなってきてるもん」

「ファンタジーランド化やな」

「南台ファンタジー」

「ファンタジー南台」

「まぁきれいなんやけど、なんかしっくりこーへんわ」

「うーん、しっくりはこんけど、幸せそうでええんちゃうかな。自分の庭こんなんやったら笑うしかないもん」

「はは、ほんまやな」

 

「うん、いいかもしれん」

 

「あ、そろそろ行かなあかんのちゃう」

「もうこんな時間かぁ」

「ファンタジー南台は混んでへんからええな」

 

「来年は恋人と来れたらいいなぁ」

「そうやな、ま、がんばろや」

「でも恋人とやったらファンタジー南台には来んかぁ」

「そやな。ははは」

「アロハ、やしな。あははは」

「あっ、やばい、ほんまに間に合えへん。走れ走れー」

「別に私あの映画見たないからいいけど」

「いいやん、おもろいってあれ」

「ま、ええけど」

 

 

 <了>